営業電話のかけ方マニュアル|初心者でも失敗しないトーク術と事前準備のコツを解説

営業電話(テレアポ)は、営業活動の基本中の基本です。しかし、「断られるのが怖い」「何を話せばいいかわからない」と感じる新人営業パーソンは少なくありません。実際、ちょっとした言い回しや準備不足が原因で、相手に不快感を与えてしまうケースもあります。
本記事では、営業電話に苦手意識を持つ人でも“成功率を高めるためのコツ”を、「事前準備」「トーク構成」「心理テクニック」「NG対応」などの観点から徹底解説します。初心者の方でも今日から実践できる具体的なマニュアルとしてご活用ください。
営業電話(テレアポ)とは?
営業電話とは、まだ取引のない見込み顧客に電話をかけ、自社サービスや商品に興味を持ってもらい、アポイントメントの獲得や商談の機会を作る営業手法のことです。
電話営業の目的は「売ること」ではなく「会うこと」
多くの新人が陥る誤解が、「電話で商品を売り込む」ことに集中してしまう点です。実際、電話でいきなり商品を売るのはほぼ不可能に近く、相手も警戒してしまいます。
営業電話の本来の目的は、「相手に会う許可を得る」こと。つまり“興味を引いて次につなげる”ことが最優先なのです。
なぜ営業電話は難しいと感じるのか?
営業電話を苦手に感じる人は多いですが、その理由を分析すると、主に3つの原因に分けられます。
① 相手の反応が見えない
対面と違い、電話では相手の表情や雰囲気が読み取れません。そのため、「今のトーンは迷惑そうだったかな?」「切られるかもしれない」と不安に感じやすくなります。
② マイナスイメージを持たれやすい
「知らない会社からの営業電話」と聞くだけで、多くの人は防衛本能を働かせます。相手の時間を奪う立場である以上、第一印象が悪いとそれだけでチャンスを失うこともあります。
③ 準備不足・台本頼りになっている
「スクリプト通りに話さなきゃ」と思うあまり、自然な会話ができず、相手に違和感を与えてしまう。また、事前に相手企業や担当者の情報を調べていないと、的外れな提案になってしまいます。
成功する営業電話の基本ステップ
営業電話には“成功しやすい型”があります。この型を理解しておくことで、どんな相手にも落ち着いて対応できるようになります。
- 準備・リスト作成
- 目的とゴールの明確化
- 第一声(印象づくり)
- ニーズヒアリング
- 提案・アポイント獲得
- クロージング・確認
- 記録・振り返り
それぞれのステップを具体的に見ていきましょう。
① 事前準備が9割を決める
営業電話の成功は、「電話をかける前」にすでに決まっているといっても過言ではありません。準備段階でどれだけ相手の情報を把握し、目的を明確にしているかが勝負を分けます。
企業・担当者リサーチ
最低限チェックしておくべき情報は以下の通りです。
- 企業の業種・規模・所在地
- 直近のニュースやプレスリリース
- 取扱商品・サービス内容
- 競合との違い
- 担当者の役職・部署
これらの情報をもとに、「この会社にはどんな課題がありそうか」「自社がどう貢献できるか」を仮説立てしておきましょう。
リストの精度が成果を左右する
テレアポでは“数を打つより質を上げる”ことが重要です。業界や規模など、ターゲットを明確にしたリストを作ることで、会話の内容が的確になり、反応率が向上します。
② トークスクリプトの作成方法
営業電話には基本の“型”が存在します。型をベースにしながら、相手に合わせて柔軟にアレンジするのが理想です。
基本構成(例)
- あいさつ・自己紹介
「お世話になっております。株式会社〇〇の△△と申します。」 - 要件の提示(興味を引く一言)
「御社の採用ページを拝見してお電話いたしました。最近、リモート採用の強化をされていると伺いまして」 - 目的の明確化
「本日は、当社の○○サービスをご紹介したいのではなく、 御社の課題を少しお伺いし、今後お役に立てそうか確認させていただければと思いまして。」 - ヒアリング
「現在、採用活動ではどのような方法を取られていますか?」 - 提案・アポイント打診
「もしよろしければ、5分ほどオンラインでお話しさせていただけないでしょうか?」
このように、“売り込まない前提”で話を組み立てることが、相手の警戒を和らげるコツです。
③ 第一声で相手の心をつかむ
営業電話の最初の5秒は“黄金の5秒”とも言われます。第一声で印象が悪いと、内容を聞いてもらう前に電話を切られてしまいます。
トーンとスピード
- トーンはやや明るく、ハキハキと
- 早口になりすぎない(1.2倍遅めの意識)
- 冒頭の会社名・名前ははっきり伝える
例:
- 「お世話になっております。株式会社○○の△△でございます。突然のお電話、少しお時間よろしいでしょうか?」
この「突然のお電話で申し訳ありません」という一言があるだけで、相手の心理的ハードルは下がります。
④ 相手に“話させる”ことで信頼を得る
営業電話で最も大切なのは、話すことではなく“聞くこと”です。人は、自分の話をきちんと聞いてくれる相手に対して好意を抱きやすい傾向があります。
有効な質問の仕方
- 「御社では、現在どのような取り組みをされていますか?」
- 「もし差し支えなければ、課題を感じていらっしゃる部分をお聞かせください。」
質問は“オープンクエスチョン(はい・いいえで答えられない質問)”を意識すること。会話を深めやすく、相手の潜在的なニーズを引き出すことができます。
⑤ トークの中で使える心理テクニック
営業電話では、相手の心理を理解しながら話すことが大切です。ここでは、誰でも実践できる心理テクニックを3つ紹介します。
1. ミラーリング効果
相手の話し方や言葉遣いを少し真似ることで、無意識に「この人は話しやすい」と感じさせる効果があります。ただし、過剰にやると不自然なので、あくまで“リズムを合わせる”意識で行いましょう。
2. イエスセット法
「はい」と答えやすい質問を3回ほど続けることで、心理的な同意の流れを作る方法です。
例:
- 「御社では採用活動をされていますよね?」
- 「人材確保に課題を感じていらっしゃる企業様も多いですよね?」
この流れで、「実はそうした課題に対して〜」と自然に提案につなげられます。
3. 限定性の提示
「今だけ」「特定企業様限定」など、限定要素を添えることで関心を引くことも有効です。ただし誇張は禁物で、事実に基づいた“期間限定・無料トライアル”などを用いるのがベストです。
⑥ アポイントを自然に取り付ける話法
営業電話のゴールは「会う約束を取り付けること」です。しかし、単に「一度お会いできませんか?」では、相手の時間を奪う印象を与えてしまいます。相手が“メリットを感じて”前向きに応じたくなるような話し方が大切です。
提案型のアポイント話法(例)
「御社の現在の課題について、他社の成功事例をもとに改善の方向性を一緒に検討できればと思います。5分ほどだけお時間をいただけませんか?」
「お電話で細かくお伝えするよりも、具体的な数字や資料をお見せしたほうが早いので、短時間でも一度お話させていただけると嬉しいです。」
このように、“相手にとって有益な話が聞ける”という構成にすると、受け入れられやすくなります。
アポイント獲得の成功率を上げるタイミング
電話の目的が伝わり、会話の空気が柔らかくなったタイミングを見極めることがポイントです。「いいお話ですね」「詳しく聞いてみたいですね」といったポジティブな反応が出た瞬間に切り出すと、成功率が高まります。
逆に、相手が忙しそう・疑問を残している段階では無理に約束を迫らず、「後日、資料をお送りしてから改めて」と一歩引く判断も重要です。
⑦ 電話の締め方とフォローアップ
営業電話の最後の印象が良ければ、たとえアポにつながらなくても「印象のいい会社だった」と覚えてもらえます。また、後日改めて連絡する際のハードルも下がります。
電話の締め方(例文)
- 「お忙しい中、貴重なお時間をありがとうございました。」
- 「本日のお話をもとに、また日を改めてご連絡させていただきます。」
- 「何かご不明点があれば、いつでもお気軽にご連絡くださいませ。」
最後まで丁寧なトーンで締めくくることが大切です。また、通話直後にメモを取り、会話の内容・反応・次回の行動を必ず記録しておきましょう。
NGトーク・やってはいけない電話対応
営業電話では、どんなに良い商品でも“言い方次第”で印象が大きく変わります。以下のNGパターンを避けることで、失敗を防げます。
NG①:相手の都合を無視する
「今お時間ありますか?」と確認せずに長々と話すのはNGです。冒頭で「30秒だけお時間よろしいでしょうか?」と断ってから本題に入るのが基本です。
NG②:上から目線・過剰な自信
「御社にとってもチャンスですよ」など、上から目線の表現は相手の反感を買います。営業電話では「提案」ではなく「お役立ちの情報共有」という姿勢を忘れずに。
NG③:相手の話を遮る
相手が話している途中で割り込むのは、たとえ善意でも失礼です。“沈黙も会話の一部”と考え、相手が話し終わるまで待つ姿勢を持ちましょう。
断られたときの対応術
どれだけ完璧なトークをしても、営業電話では断られることが避けられません。重要なのは、断られた後の立ち振る舞いです。
「検討しておきます」と言われた場合
このフレーズは“やんわり断りたい”意思表示である場合が多いです。しかし完全な拒否ではないため、次につながる可能性を残しましょう。
例:
- 「ありがとうございます。では、2週間ほど経ってから改めてご連絡差し上げてもよろしいでしょうか?」
このように“再連絡の約束”を取っておくことで、リスト上で優先度を落とさずに済みます。
「興味ありません」と言われた場合
即答で断られた場合も、感情的にならずに冷静に返すことが大切です。
例:
- 「承知いたしました。突然のお電話でお時間をいただきありがとうございました。もし今後ご状況が変わられた際は、改めてご提案できれば幸いです。」
ここでの対応が丁寧だと、「感じの良い営業だった」と印象に残り、将来のチャンスにつながることもあります。
「担当者が不在」と言われた場合
受付や代表電話にかける場合、担当者不在のケースはよくあります。このときは、単に「またかけます」ではなく、次のように記録を残す形で進めましょう。
例:
- 「ありがとうございます。では、△△様がご在席のご予定をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
- 「失礼いたしました。それでは明日の午前中にお電話させていただきます。」
このように“いつ再度連絡するか”を明確に伝えることで、次回の通話がスムーズになります。
電話営業で成果を上げるためのコツ
成果を出している営業パーソンには、いくつか共通する習慣があります。以下の3つを意識することで、継続的な改善が可能です。
① 「数」と「質」を分けて管理する
単に「今日100件電話した」という数字だけでは意味がありません。“アポイント率”や“担当者接続率”など、質を示す指標も併せて管理しましょう。
例:
- 100件中 30件が担当者につながった(接続率30%)
- 30件中 3件がアポイントに至った(アポ率10%)
こうしたデータを継続的に記録すれば、自分の弱点を客観的に把握できます。
② 録音・振り返りで改善する
自分の通話を録音して聞き返すと、意外な改善点が見つかります。「語尾が早口になっている」「相手の返答にかぶっている」など、実際の音声で確認すると精度が上がります。
可能であれば、上司や同僚に聞いてもらい、フィードバックを受けるのも効果的です。
③ トークを“状況別テンプレート化”する
毎回ゼロから話を組み立てるのは非効率です。たとえば、以下のような「状況別トーク集」を作っておくと安心です。
- 初回接触用トーク:簡潔で印象を良くする構成
- リピートフォロー用:前回話した内容を踏まえた続きの提案
- 断られた後の再接触用:情報提供・ニュース共有からの再アプローチ
このように目的別にスクリプトを分けることで、柔軟に対応できるようになります。
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【状況別】営業トーク例文集|顧客の心を掴む秘訣とは? | Hakky Handbook
電話営業で成果を出す人のマインドセット
技術だけでなく、“考え方”も成功を左右します。成果を出す営業パーソンは、次のようなマインドを持っています。
① 「断られるのが前提」
営業電話の成功率は、一般的に数%〜10%前後と言われています。つまり、10回中9回は断られるのが当たり前。この確率を理解しておくことで、一喜一憂せずに行動を継続できます。
② 「相手に価値を提供する意識」
電話を「売り込み」ではなく「情報提供」「課題解決のきっかけ」と捉えること。相手の立場に立って会話を構成すれば、自然と信頼関係が築けます。
③ 「1本1本を検証し続ける」
たった1本の電話でも、改善点は必ずあります。通話内容・相手の反応・自分の声のトーンなど、次に活かせる要素を常に振り返りましょう。
まとめ|営業電話は「準備」と「聞く力」が成功の鍵
営業電話は、多くの営業職が最初につまずくポイントですが、本質は「相手の時間を尊重しながら、価値を届けるコミュニケーション」です。
入念な事前準備と、相手の話を引き出す姿勢があれば、どんな相手でも誠実な印象を残せます。そして、失敗や断りを恐れず、毎回の通話から学ぶことで、確実にスキルは上達していきます。
「話す営業」から「聴く営業」へ。その意識の転換こそが、電話営業で成果を出す第一歩です。