営業事務とは?営業との違いや仕事内容・求められるスキルをわかりやすく解説

企業の売上を支える「営業部門」には、実際にお客様と商談を行う営業担当者だけでなく、その活動を裏で支える「営業事務」という存在があります。
営業事務は、単なる「事務職」ではありません。見積書や請求書の作成、顧客データの管理、納期調整、電話対応など、営業がスムーズに提案活動に専念できるように環境を整える重要な役割を担っています。
一見すると地味な仕事に思えるかもしれませんが、営業事務の働きがあるからこそ、営業チーム全体の生産性が高まり、取引先からの信頼が保たれているのです。
本記事では、「営業事務」とはどのような職種なのか、営業職との違い、具体的な仕事内容、そして求められるスキルやキャリアパスまで、わかりやすく解説します。
営業事務とは?
定義と役割
営業事務とは、営業担当者の業務をサポートし、営業活動を円滑に進めるための事務全般を担当する職種です。一般的な事務職(総務・経理など)は社内の管理業務が中心ですが、営業事務は「営業部門に特化した事務職」といえます。
営業担当が顧客対応や商談に集中できるよう、見積書・契約書・発注書などの作成、納期管理、受発注処理、請求書発行、売上データ入力など、営業活動の裏側を支える実務的な業務を担当します。
そのため、営業事務は「営業サポート」「バックオフィス」と呼ばれることもあります。直接お客様に商品を販売することはありませんが、営業チームの成果に直結する“縁の下の力持ち”として欠かせない存在です。
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営業職との違い
営業事務と営業職は同じ「営業部門」に属することが多いですが、役割も働き方も大きく異なります。
| 比較項目 | 営業職 | 営業事務 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 顧客との商談・契約・提案活動 | 営業のサポート・事務処理・調整業務 |
| 勤務スタイル | 外勤(訪問・出張が多い) | 内勤(オフィス中心) |
| 成果指標 | 売上・契約数・受注率など | 事務処理の正確性・スピード・サポート品質 |
| 必要スキル | コミュニケーション力・提案力・交渉力 | 正確な事務処理・調整力・PCスキル |
| 向いている人 | 対人業務が得意で、成果主義を楽しめる人 | コツコツ業務をこなし、チームを支えるのが得意な人 |
営業職が「フロントライン(前線)」に立つとすれば、営業事務は「司令塔の後方支援」です。お客様と直接取引を行う営業担当に比べ、営業事務は社内の調整や管理が中心になりますが、その分、組織全体を俯瞰するスキルや正確性が求められます。
営業事務の主な仕事内容
営業事務の仕事は多岐にわたります。業界や企業規模によって多少異なりますが、代表的な業務をカテゴリ別に整理すると以下の通りです。
1. 見積書・契約書の作成
営業担当者が顧客に提示する見積書の作成は、営業事務の基本業務です。取引内容・単価・納期・支払条件などを正確に入力し、フォーマットに沿って文書を作成します。
また、契約成立後には契約書の作成や社内承認フローの対応なども担当します。ミスがあれば契約トラブルや信用失墜につながるため、正確性と注意力が最も求められる工程です。
2. 受発注・納期管理
受発注システムに注文内容を登録し、在庫や納期を確認。顧客や仕入先、倉庫、配送業者とのやり取りを通じて、スムーズに商品やサービスが届くように調整します。
特に製造業や卸売業では、納期遅延や数量ミスが取引先の信頼を損なう要因になるため、営業事務の管理能力が企業の信用を守るとも言えます。
3. 請求書・入金管理
月末や納品後に請求書を発行し、入金の確認・消込処理を行います。会計システムやExcelなどを活用し、営業データと売上金額の整合性を取る業務も含まれます。
営業担当が売上を上げても、請求や入金処理が正確でなければ会社のキャッシュフローに影響します。営業事務は「お金の流れを支える事務職」として、経理的な感覚も重要になります。
4. 顧客情報・売上データの管理
顧客マスタ(社名・担当者・連絡先など)や過去の取引履歴、売上進捗などをCRM(顧客管理システム)に登録・更新します。この情報は、営業会議やマーケティング分析の基礎データとなるため、正確でタイムリーな更新が欠かせません。
特に近年は「データドリブン営業(データに基づく営業戦略)」が広がっており、営業事務が扱うデータの質が企業の意思決定を左右するほど重要になっています。
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5. 電話・メール対応、来客応対
営業担当が外出中の際に顧客からの電話を受け、用件を的確に伝達するのも営業事務の役割です。クレーム・納期確認・見積依頼など、状況によっては即時対応が求められるため、柔軟な判断力とコミュニケーション能力も必要になります。
単に「伝言を預かる」だけでなく、「担当が不在ですが、〇〇の件であれば私から確認いたします」といった一歩踏み込んだ対応ができる営業事務は、顧客からの信頼も厚くなります。
6. 営業資料やプレゼン資料の作成補助
営業担当が商談で使用するプレゼン資料や提案書の作成をサポートする場合もあります。ExcelやPowerPointを使い、売上推移グラフ・商品一覧表・提案内容のビジュアル化を行うなど、資料作成スキルも重視されます。
特に営業チームが複数案件を抱えている場合、資料フォーマットを統一したり、ブランドイメージに沿ったデザインを整えるなどの業務も発生します。
営業事務に求められるスキル
営業事務は、単に“事務処理ができればよい”職種ではありません。営業部門と顧客の橋渡し役を担うため、正確性・スピード・柔軟性・人間関係構築力といった総合力が求められます。以下では、特に重要なスキルを詳しく解説します。
1. 正確で丁寧な事務処理能力
見積書・請求書・発注書など、金額や契約条件に関わる文書を扱うため、入力ミスや転記ミスは許されません。一つの数字や日付を間違えるだけで、顧客トラブルや会社の信用失墜につながることもあります。
そのため、営業事務に最も求められるのは「正確性」と「慎重さ」です。また、作業量が多い時期(例:月末・期末)でもミスを防ぐために、チェックリスト管理やダブルチェックの習慣を身につけることが重要です。
2. コミュニケーション力・調整力
営業事務は、営業担当・顧客・他部署(経理・物流・購買など)の間に立つ“調整役”でもあります。そのため、電話やメールでの連絡が非常に多く、相手の意図を正確に理解し、適切なタイミングで伝える力が欠かせません。
特に納期調整や在庫確認では、複数の関係者の要望をまとめて最適解を導く必要があります。「誰が」「いつまでに」「何を」すべきかを整理しながら、円滑な連携を取れる人が信頼される営業事務です。
3. パソコン・ITツールのスキル
日々の業務では、Excel・Word・PowerPointなどのOfficeツールはもちろん、社内システム(受発注管理/CRM/SFAなど)を扱う場面も多いです。
- Excel:見積書・請求書の作成、売上集計、関数・ピボットテーブルによるデータ分析
- Word:契約書や案内文書の作成
- PowerPoint:営業資料やプレゼン資料の作成サポート
- クラウドツール:Google Workspace、Teams、Slack、Salesforceなどの活用
IT環境の進化に伴い、営業事務もデジタル化に対応できる柔軟性が求められます。単なる「入力オペレーター」ではなく、業務を効率化する提案ができる人材は特に重宝されます。
4. タイムマネジメントとマルチタスク力
営業事務の一日は、顧客からの電話、営業担当からの依頼、納期確認、資料作成など、複数のタスクが同時進行で発生します。そのため、優先順位を瞬時に判断して効率よく処理する力が不可欠です。
- 緊急度の高い納期変更対応 → 優先度:最上位
- 翌週提出の見積書修正 → 優先度:中
- 定期報告資料の準備 → 優先度:低
ToDoリストやスケジュールツールを活用し、タスクを可視化・整理できる営業事務は、チームから非常に信頼されます。
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5. 柔軟な対応力と臨機応変さ
営業現場では、予定外のトラブルや変更が頻発します。「納期が急に前倒しになった」「顧客の要望が変わった」「システムが停止した」など、その都度、臨機応変に対応しなければなりません。
マニュアル通りに動くだけでなく、「今、最優先すべきは何か?」を判断できる人こそ、本当の意味で“できる営業事務”といえます。トラブル対応を冷静にこなし、チームを支える力が求められるのです。
営業事務に向いている人・向いていない人
営業事務は、性格や得意分野によって向き・不向きがはっきり分かれる仕事です。ここでは具体的な特徴を整理してみましょう。
向いている人の特徴
- コツコツ作業が得意な人
数字やデータを扱う細かい業務が多く、地道な確認作業を苦にしない人に向いています。 - サポート役にやりがいを感じる人
「前に出るより支える方が得意」「人の役に立つのが好き」といった人は活躍しやすいです。 - 臨機応変に対応できる人
イレギュラー対応や複数案件の同時進行に冷静に対処できる柔軟性がある人。 - 周囲との協調性がある人
営業・経理・顧客など、多くの人と関わるため、協力的で調整上手なタイプが向いています。
向いていない人の特徴
- 細かい作業が苦手な人
入力や確認の精度が求められるため、大雑把な性格だとミスが増えやすいです。 - 単調な仕事を飽きやすい人
毎月同じような書類作成や処理が多いため、ルーティンを退屈に感じる人には不向きです。 - 人の指示待ちになりがちな人
営業事務は「サポート」とはいえ、自ら動ける積極性も大切。指示待ちでは対応が遅れます。
営業事務のやりがい・魅力
営業事務の魅力は、「表舞台には立たないが、確実に組織を支える達成感」にあります。
- 営業チームの信頼を得られる
「○○さんがいないと回らない」と感謝される瞬間が多いです。成果を直接出すわけではなくても、陰で営業成績を支えている実感があります。 - 顧客との信頼関係を築ける
電話やメールのやり取りで顧客と関係を深め、「○○さんにお願いしたい」と言われることも。営業担当と同じくらい顧客に信頼される立場になれるケースもあります。 - 業務改善や効率化に貢献できる
事務処理フローを見直したり、Excelマクロや自動化ツールを導入することで、組織全体の生産性を上げる実績を出すことも可能です。
営業事務のキャリアパス
営業事務として経験を積むと、次のようなキャリアに発展するケースがあります。
1. 専門的な営業サポート職
営業部門のエキスパートとして、チーム全体の進捗管理や新人教育を担当する立場。社内での信頼が厚いベテラン営業事務がこのポジションに就きます。
2. 営業職・企画職へのステップアップ
顧客対応や商談補助の経験を活かして、外勤営業や営業企画にキャリアチェンジする人もいます。数字の流れや契約構造を理解しているため、実は営業職に転向しても即戦力になるケースが多いです。
3. 管理職・マネジメント職
大企業では「営業事務リーダー」や「営業サポートマネージャー」として、メンバー育成・業務改善・全体最適を担うポジションも存在します。
働き方の多様化と今後の展望
近年では、営業事務の働き方も大きく変わってきました。
- リモートワーク・在宅勤務の普及
クラウド型の受発注・請求システムにより、在宅でも処理可能な企業が増えています。特に子育て世代や家庭との両立を重視する人にとっては魅力的な環境です。 - AI・自動化による業務効率化
単純な入力や集計業務はAI・RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)に置き換わりつつあります。その分、人間にしかできない“判断・調整・提案”の部分が重要になります。 - スキルアップでの市場価値向上
データ分析・営業DX・CRM活用など、ITスキルを磨くことで、営業事務の枠を超えて「営業戦略サポート職」へと進化できる時代です。
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まとめ|営業事務は「数字と人」をつなぐ調整のプロフェッショナル
営業事務は、営業担当の“右腕”としてチーム全体の成果を支える重要な存在です。正確な事務処理、円滑なコミュニケーション、臨機応変な対応力があってこそ、営業活動はスムーズに回ります。
AIやデジタルツールの普及が進んでも、「人と人との調整」「信頼関係の構築」は人間にしかできない領域です。その意味で、営業事務はこれからの時代にも欠かせない、企業運営の要といえるでしょう。
